歴彩館/チームGANTT共催ワークショップ参加レポート

去る2018年11月27日(火)に行われた「ワークショップ『あなたの知らない京都の旅』を考える」第3回目のレポートをお伝えします。

オリジナルの京都ツアーを企画してポスターに仕上げるワークショップ

このワークショップは、「京都の新しい旅のプランを考える」というテーマのもと、10月23日に第1回目、同月30日に第2回目が開催され、それぞれ多彩な観光素材を有する京都の新たな切り口によるツアープランについての講義や、企画を進める上で必要とする資料の探し方などを受講しました。そして3回目のこの日は、参加者が考えた旅のプランをポスターにして持ち寄り、それを見ながら参加者同士が意見交換をするポスターセッションが行われました。

今回のワークショップの企画者である「チームGANTT」は、京都大学や滋賀大学で教鞭を執る教員の方々が中心となり、それぞれの専門性を活かしながら「文理融合授業」を実践している組織です。専門分野の異なる複数教員が1つのテーマを軸に講義やワークショップを行うのが特徴で、たとえば京都の都市をテーマにした授業では、都市形成の歴史から都市を取り巻く地質について、はたまた碁盤の目の区画を数学的側面から解説したりなど、文理の垣根を越えた多様な側面から学べます。通常の講義では考えられない話の展開があり、見識を広められるうえ、思考が活性化される気がしました。

まずはツアーテーマを設定

1回目、2回目のワークショップで講座を受けた後、約1ヶ月の期間で自分が考える京都ツアーのプランをポスターにまとめるというお題が出されましたが、テーマ性のある旅のプランを考える上で、まずは何をテーマにするか頭を悩ませました。当初私が思いついた「陶器ゆかりの地」というテーマは、なかなかツアープランの広がりを考えられず、ボツに。そして、何気にふと脳裏に浮かんだ「すぐき」が、いろいろと展開できそうなテーマであることに気づき、すぐき漬けを中心にした「京都ゆかりの発酵食品」をテーマにするツアーを企画することに決めました。

ツアープランを考えるに際して、まずは「すぐき」に関して調べることからはじめました。その発祥や産地、製法のほか、すぐき漬けを食べることで得られる効能など、調べるほどに興味深い事実が見えてきました。たとえば次のようなことを改めて知ることができました。

・すぐき漬けの原料である「すぐき菜」は、カブの変種で、もともと上賀茂地域だけで栽培されていた。学名は、Brassica rapa var. neosuguki 。

・桃山時代頃から社家(上賀茂神社の神官の住まい)の邸内で栽培されはじめ、江戸時代までは門外不出だった。やがて、江戸末期になってようやく周辺の農家でも栽培されるようになるが、上賀茂地域一帯に限られていた。その後、昭和35年にすぐき菜に病気が大発生した際に畑を辞める農家が続出。上賀茂周辺に限られていたすぐき栽培は、しだいに均衡の地域へと栽培地を広げている。

・原料は、すぐき菜と塩だけ。天秤重石と呼ばれる独特の道具で実際の重石の何十倍もの圧力をかけて漬け込む。その後、室と呼ばれる40℃前後に室温を保たれた建物で発酵させるという、独自の技法によって作られる。

・室が使われるようになったのは昭和のはじめごろからで、それまでは自然発酵による製造法が取られていたため、すぐき漬けの旬は夏であった。

・すぐき漬けから発見されたラブレ菌と名づけられた乳酸菌は、人間の消化液に対して強い耐性をもつことから、腸内の免疫細胞を刺激して、免疫機能を高める効果がある。

これらの知識は、京都学・歴彩館にある資料から得ることができました。同館の司書の方々にも尋ねることで、すぐきの情報が載っている図書や新聞記事などいくつもの資料を読むことができ、知識が深まりました。

ツアープラン立案に当たっては、すぐきゆかりのスポットを観光ルートに入れるほか、「京都ゆかりの発酵食品」として、大徳寺納豆や白味噌に関係する場所もルートに加えました。また、チームGANTTの講義を参考に、テーマから派生するような要素を加えるべく、「かぶの変種で、限られた地域にしか生息していない(いなかった)植物」という観点から、上賀茂の東端にあり、希少な動植物が生息する深泥池も、ツアープランに加えました。

そして私が企画したツアープランのポスターがこれ。

ポスターサンプル

参加者同士で質問を通して交流することで、学習意欲を喚起

ポスターセッションでは、参加者の方々に「すぐき」についていろいろと質問をいただきましたが、明確に答えられないことも多く、まだまだ知識を深められるテーマだと思いました。

これを機に、別のテーマでもツアープランを考えてみたくなりました。知られざる京都ツアーを企画することは、自分の興味関心をもとに京都について探ることから、学校教育においても、特に京都の小学校で良い教材となるのではないでしょうか。近年では上賀茂地域のみならず、すぐき菜が亀岡市で作られていたり、滋賀県でもすぐき漬けが生産されているようですので、地域の特産品を守り続ける苦労についても学べる題材であるといえます。

■チームGANTT

http://gantt.jpn.org/index.html

■ワークショップ報告(京都学・歴彩館ホームページより)

https://www.pref.kyoto.jp/rekisaikan/siryo-e201805h.html

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